こんにちは、ソラコムのプロダクトマネージャーの小林 (ニックネーム: tau) です。
先日 2025 年 4 月 4 日、SORACOM Harvest Data (以下、Harvest Data) に一括書き込み機能が追加されました。この機能により、複数の書き込みリクエストを単一のデータ送信で実行できるようになりました。この記事では機能の紹介と、便利にご利用いただけるユースケースをご紹介します。
機能の概要
Harvest Data は、IoT デバイスからのデータを収集・蓄積するサービスです。SORACOM Air for セルラーなどのデータ通信と組み合わせて使うことで、IoT デバイスのセンサーデータを手軽かつ安全に収集・蓄積することができます。
今回新しく追加した「一括書き込み」は、1 回のデータ送信で複数件のデータを Harvest Data に書き込む機能です。これまで Harvest Data では、1 回のデータ送信で書き込まれるデータエントリは、常に 1 件でした。
例えば、それぞれ 6 時、12 時、18 時、24 時と 6 時間ごとに測定した 4 件の測定データを、24 時の測定後に 1 日 1 回まとめて送信できます。IoT デバイスがデータ送信を実行する回数を 4 分の 1 に減らし、消費電力を低減する効果が期待できます。これまでは、各測定ごとに 4 回のデータ送信が必要でした。

[画像] Harvest Data の一括書き込みの概念図
一括書き込みを利用するには、次の 2 点に沿った JSON データを送信してください。
- 書き込む複数のデータエントリを JSON 配列に含めてください。
- 各データエントリには、時刻データを含めてください。
例:
[ {"time": "2025-04-07T06:00:00+09:00", "value": 12}, {"time": "2025-04-07T12:00:00+09:00", "value": 34}, {"time": "2025-04-07T18:00:00+09:00", "value": 56}, {"time": "2025-04-08T00:00:00+09:00", "value": 78} ]
使用例
ユースケースの例として、遠隔地にある構造物や環境のモニタリングが挙げられます。これには 2 つの要素が関係しています。
- 十分な電力インフラが整備されていない山間部などで稼働する IoT 機器は、ときに容量制限のある電源 (乾電池やバッテリー等) に依存しています。一括送信を利用してデータの送信頻度を抑えると、消費電力を節約できる可能性があります。これは、現場に赴いて電池交換などの作業を行う手間を省力化することに繋がります。
- データを貯めてから送信する性質上、一括送信はデータの鮮度をある程度犠牲にしてしまいます。そのため、速報性が極めて重要になるような IoT システムでは、従来の Harvest Data の書き込み (1 回の送信で 1 件のデータエントリ) が適します。一方で、変動がゆっくりだったり、ある程度変化の傾向が読みやすいデータを扱う IoT システムでは、一括書き込みが効果的です。
他に、SORACOM Lagoon (以下、Lagoon) との組み合わせでも、一括書き込みは便利にお使いいただけます。一括書き込みを利用すると、Lagoon でも容易にデータ可視化を実現できます。これは、デバイスが 1 回の通信でまとめて送信された複数のデータを、Harvest Data で複数のデータエントリに分解して保存できるためです。
これまでも、複数のデータをまとめて Harvest Data に送信し、保存すること自体は可能でした。しかしその場合は複数のデータ (例えば 6 時、12 時、18 時、24 時の温度データ) が 1 件のデータエントリ内に混在することとなり、そのような形式のデータエントリを Lagoon で可視化することは難しかったです。
まとめ
SORACOM Harvest Data に追加された「一括書き込み」機能は、IoT デバイスのバッテリー消費を抑えながら、Lagoon によるデータ可視化もシンプルに実現できる機能です。ぜひこの新機能を活用し、お客様の IoT システム構築にお役立てください。
― ソラコム 小林 (tau)